土・食・人が、循環する。豊洲 千客万来内に、畑の土を活用した店舗「芋松」がオープン

2024年2月、豊洲市場に隣接する商業施設「豊洲 千客万来」内に、青果仲卸「芋松」が運営する店舗がオープンしました。淺沼組は技術開発・施工を担当。店舗で販売する野菜を育てる「畑の土」をそのまま内装材として利用することを提案し、土壁を積層させた「立体木摺土壁」を開発したほか、廃棄処分されていた野菜の梱包時の緩衝材の「おがくず」をリユースした棚板の製作に取り組みました。

photo by Noriyuki Yano

日干し煉瓦の応用「立体木摺土壁」の開発

土や藁スサ、おがくずといった自然由来の素材を用いて、土と木を積層した壁です。古来より世界中で用いられてきた、日干し煉瓦※を応用して、内装材として開発しました。土壁を自立可能な構造として安定化・軽量化し、短時間での施工が可能です。自然材料に水を混ぜて成形し、人力で積み上げるため、製造・施工時におけるCO2排出量が低く、土や木のなかにCO2を貯留する機能を持ちます。解体後は、土と木を分離し、新たな建築内装材として再生利用するか、畑の土に還元することで、サーキュラーエコノミーの一環に位置づけることを目指しました。
※日干し煉瓦 土を手成形あるいは型枠成形し、自然乾燥させたもの

Photo by Tomohiro Saruyama

おがくずをリユースした、棚板

野菜の運搬時の緩衝材として用いられるおがくずと廃プラスチックを組み合わせて固めた天板を開発し、商品陳列用の棚として設置しました。おがくずや廃プラスチックを敷き詰める順番や割合、加熱時間の違いにより、色合いや透過具合の異なる多様なバリエーションを生み、様々な寸法に加工して用いることができます。透け感があり、裏側から光を当てるとおがくずが浮かび上がります。

設計者 木野内剛氏コメント

本プロジェクトは、事業主が契約する農家の畑の「土」を建築資材として活用し、できるだけシンプルなデザインで、新鮮な野菜の彩りを引き立たせる空間を目指しました。立体木摺土壁の色味は、土に含まれる有機物と配色材料として練り込んだ「にかわ墨汁」の反応によって変化するなど、自然にゆだねる楽しさを感じながら、実験・検証を重ねて進めていきました。

現在、建築には、地球環境に与える影響を最小限に抑えつつ、持続可能な社会と豊かな生活を実現するために、多様な視点からの取り組みが求められます。そのためには、建築家、エンジニア、職人、そして社会を⽀える様々な専⾨家が協⼒しなければなし得ません。今回は、畑の「土」を提供いただいた農家さん、おがくずの廃材を提供いただいた事業主初め、関係者が一体となり、資源の消費を最小限に抑え,廃棄物を削減できる循環型建築の設計と施工を推進できました。今後、世界中から訪れる人が、新鮮な野菜を通して日本の自然・風土に慣れ親しんでもらえることを願っています。

左手前から)淺沼組技術研究所山﨑順二、畑を所有する農家の石井雅浩さん、事業主「芋松」の伊藤芳光さん、木野内剛さん(左後ろから)境洋一郎さん(KSAG)、淺沼組営業 景山康生、淺沼組営業 畠山隆彰、設計協力者の萱沼宏記さん、淺沼組技術研究所福原ほの花
TOPICS一覧へ戻る